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航空自衛隊(空自)を中心に、自衛隊の装備品で「共食い整備」と呼ばれる問題が深刻化しています。これは、部品不足により稼働できない機体から部品を取り外し、別の機体に転用して運用を維持する手法です。防衛省の調査によると、2021年度には空自の航空機で約3,400件の共食い整備が発生し、装備全体の稼働率は約5割にとどまるとされています。この状況は、防衛力の維持や訓練の質に大きな影響を及ぼしています。
共食い整備の背景と実態
共食い整備は、部品の在庫不足や調達の遅延が主な原因です。防衛装備品の高度化に伴い、部品の単価や整備費用が上昇する一方、維持整備予算が十分に確保されてこなかったことが問題を悪化させています。例えば、F-2戦闘機やP-1哨戒機、F-15J戦闘機などで共食い整備が常態化しており、部品不足により稼働可能な機体が全体の半分程度に留まる状況です。
元航空自衛隊補給本部長の吉岡秀之氏は、「在庫不足が深刻で、緊急調達でも間に合わない」と指摘。共食い整備は、通常の部品交換に比べ作業負担が2倍になるため、整備員の負担が増大し、訓練時間の削減や可動率の低下を招いています。
政府の対応と課題
政府は2027年までに共食い整備の解消を目指し、2023年度からの5年間で維持整備費を約9兆円に倍増する計画を打ち出しました。これは現行の中期防衛力整備計画の約4兆円から大幅な増額です。しかし、装備品の調達単価の上昇や老朽化による退役機の増加が続き、予算の優先度が新装備の導入に偏りがちな点が課題です。
防衛省幹部は「共食いは一時しのぎの措置で、本来あってはならない」と強調。効率的な整備体制の構築や、3Dプリンターを活用した部品の自作、部外委託の拡大(PBL契約など)を通じて負担軽減と稼働率向上を目指していますが、抜本的な解決にはさらなる予算と長期的な計画が必要です。
国際比較と今後の展望
共食い整備は自衛隊に限らず、米海軍や韓国空軍でも見られます。米海軍のニミッツ級空母では、戦闘システム関連の電子部品の故障率の高さから共食いが頻発。韓国空軍のKF-16戦闘機では稼働率80%を維持しているものの、部品流用が常態化しています。一方、過去の例では、スペースシャトルの共食い整備がチャレンジャー号事故の一因となったケースもあり、リスクの大きさが浮き彫りです。
X上でも、自衛隊の共食い整備に対する懸念が広がっています。元自衛官やジャーナリストが「予算不足で防衛力が低下している」「米国製高価な装備の購入に偏らず、整備予算を優先すべき」と訴える声が目立ちます。
結論
自衛隊の共食い整備は、予算不足と装備の高度化が絡み合った構造的な問題です。政府は整備費の増額や効率化を進めていますが、稼働率の低下や整備員の負担軽減には時間がかかるでしょう。国民の安全を守るためには、装備の導入だけでなく、既存装備の運用を支える整備体制の強化が急務です。
参考文献
  • 日本経済新聞「自衛隊装備品、部品不足の『共食い』解消 27年まで目標」
  • 産経ニュース「空自軍用機で部品『共食い』3400件超 整備費不足深刻」
  • 防衛省「令和5年版防衛白書」
  • X投稿(
    @toshio_tamogami
    ,
    @Sankei_news
    ほか)
注:本記事は2025年5月17日時点の情報を基に作成されています。

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